旧刈谷浴場を「国の登録文化財に」
刈谷市の深谷さんら建築士チームが調査
刈谷市新栄町で2011年まで営業していた築約100年の旧刈谷浴場の建物を、深谷光秀さん=同市=ら一級建築士でつくるチームが「あいちヘリテージマネージャー(地域歴史文化遺産保全活用推進員)養成講座」の課題の一環で調査。「当時としては珍しい鉄筋コンクリート造りで、意匠も非常に特徴的。国の登録文化財に指定されるべき建築物」と、建物の価値と保存を主張しています。
大正末期の建物 保存活用を模索
調査チームは深谷さんをはじめ、工藤映子さん、吉村真基さん、謡口志保さんの4人。昨年から今年の夏にかけて行われた同講座を受講し、文化財として後世に残したい県内の古い建築物として「刈谷浴場」に注目。歴史や建物の特徴などを詳しく調べました。
同浴場は1923(大正12)年に竣工。52年(昭和27)年頃に増築されました。6本の柱が建つ外観は、神殿のような印象。内部は壁の下部、床、浴槽にモザイクタイルが全面に張られ、南側の壁にはアーチ状のニッチの奥に山などの風景を題材にしたモザイク壁画が描かれています。
現在、同浴場は塗装業者に倉庫として貸し出されていますが、劣化が進み、保存には耐震補強が必須。金銭面が課題の一つですが、すでに県の近代化遺産に選ばれていることもあり、所有者は「現状維持で残していきたい」と建物の保存を希望しているそうです。
9月18日、名古屋商工会議所で同講座の調査発表会が行われ、深谷さんらのチームは同浴場を「地域国土の歴史的景観に寄与する物」と強調。NPOや第3セクターなどによる管理で歴史観光拠点として整備し、「コミュニティーの拠点となる性質を兼ね備えた喫茶店などに活用できないか」と提案しました。
「23年は竣工から100年。この節目を生かして、保存への気運を高めていけたら。市民の皆さんにPRするイベントの開催も考えていきたい」