刈谷文化賞・功労賞
愛知県刈谷市の刈谷文化協会は、地域の文化芸術の振興に尽くした会員63人と1団体を表彰しました。文化賞は華道の鈴木君亞さんと箏曲の江坂君代さん、文化功労賞は洋画の鈴木康則さんと小山華道クラブが受賞。各部門で活躍する文化奨励賞は15人、80歳以上の敬寿栄誉賞は45人が選ばれました。
〈華 道〉生け花は、花との出会い 泉田町 鈴木君亞さん
「生け花は、花との出会いですね」
華道家元池坊の鈴木君亞さん(80)=泉田町=は、独自の感性と長年の経験で、さまざまな花や草木の持つ個性を、生け花で見事に表現。「生けた姿に、正解はないと思います。作る過程を楽しんでもらえたらうれしい」と生け花の魅力を語ります。
池坊本部中央委員を務め、全国で開催される池坊花展の運営などに携わる一方で1978年、同協会に入会し、華道部会理事などを歴任。自宅や泉田市民館で教室を開くなどして、華道の普及に努めてきました。
「小学5年の時、庭に咲いたエニシダと赤い花を摘み取り、白いつぼに生けると、華道のたしなみがあった兄が褒めてくれた。それが生け花に興味を持ったきっかけです」
18歳から教室に通って本格的に学び、40代では〝いけばなの最高教育機関〟と呼ばれる池坊中央研修学院(京都)で研さんを積みました。「国内外から集まる受講生に刺激を受けました。家元からは生け花の技術だけでなく、人の生かし方なども学ぶことができた」と振り返ります。
「家族の理解と周囲の皆さまの支えがあってここまできました。感謝の気持ちを忘れず、これからも生け花の楽しさを伝えていきたい」
〈箏 曲〉若い奏者の道を開く 大正町 江坂君代さん
生田流箏曲宮城社大師範。江坂君代さん(77)=大正町=は、箏曲家としての演奏活動や後進への教授に尽力。刈谷文化協会には37年在籍して箏曲部会の部会長など務めてきました。
30代で「えさか会」を立ち上げ、稽古に励む会員たちに「発表の場を」と毎年、演奏会を開催してきました。市の芸能発表会の運営に携わり、市制50周年の年には、会派の枠を取り払った大演奏会を企画。50人による箏曲「六段の調べ」を、満席の刈谷市民会館(当時)に響かせました。
2006年には、刈谷の姉妹都市ミササガ市で演奏して国際交流を担い、12年前からは衣浦小学校などの授業で「箏体験指導」も実施。邦楽の普及発展と市の芸術文化の振興に力を注ぎ続けます。
知立市出身。母親に勧められて箏の世界に飛び込み、今年で約70年。最初は稽古が嫌で中学ではバスケットボールに夢中だったそうですが、10代の終わり頃になると友人の誘いも断るほど稽古に没頭したとか。
「指揮者のいない箏の合奏は、奏者一人一人が周囲のリズムと呼吸をおもんぱかりながら演奏します。全員の音色がピタっと合った時はもう言葉になりません」とにっこり。「宮城社創立者の宮城道雄先生と、所縁のある刈谷市で活動できることに、深い縁を感じています。若い奏者が活躍できる道を残すことが私の役目です」
〈洋 画〉芸能文化で人とつながる 高松町 鈴木康則さん
絵画グループ「美参会」の代表を務める鈴木康則さん(70)=高松町=は、刈谷文化協会の前身となるレクリエーション協会文化部の時から文化祭の会場設営などに携わり、1976年、文協設立と同時に入会。洋画部会、美術部門などの要職を担い、会員らの芸術活動を支えてきました。
「会員が磨いた技能の発表の場であり、市民が地元で文化芸術に触れる機会」と、文協主催の作品展や市民文化祭は重きを置いて活動。「目の前で作品を見る、触れる、会場の空気の振動を感じる。SNSなどでは得られない感動を味わうと同時に、同じ感覚を持つ仲間がいることを知り、人がつながる機会になれば」と期待を込めます。
亀城小学校5年の時に、近所に住む画家都築信夫さんに師事し、仕事をしながら絵を描き続けて約60年。公募の一線美術会展で受賞を重ね、同会愛知支部を創設、同展の審査員も務めました。
「これまでは、定年を機に生活の軸足を仕事から趣味へ移行する方が多かったが、定年の延長で、そのタイミングがずれてきた」と指摘する鈴木さん。「文化芸術活動は、生きがいを持って生活していく上で無くてはならない『心のインフラ』だと思います。人生100年時代だからこそ、健康を維持し心豊かに生きるために、生涯学習と働くことをセットで考えてほしい」と呼びかけます。
刈谷文化奨励賞と敬寿栄誉賞は、次の皆さん=敬称略。
【文化奨励賞】
▽俳句 神谷明子(小垣江町)▽川柳 木村好夫(末広町)▽書 山口律舟(安城市)▽手工芸 鈴木靜代(高須町)▽華道 小林和子(築地町)正木紫幸(高須町)浅井百合子(御幸町)▽茶道 岡田伊代子(知立市)稲垣宏枝(松栄町)▽日本舞踊 水谷朱里(小垣江町)▽民謡 国実洋子(野田町)▽箏曲 市岡縁(半城土西町)▽フラダンス 武藤有紀(宝町)▽フォークダンス 大井和世(松坂町)▽大正琴 長谷川ちず子(半城土町)
【敬寿栄誉賞】
▽俳句 正木マスミ(高須町)村松五灰子(西尾市)青木啓三(富士見町)▽日本画 山口武浩(小垣江町)▽水墨画 北村洋次(安城市) 神谷修(東境町)山本勝男(荒井町)岡本照子(矢場町)▽洋画 中村京市(野田町)▽水彩画 幾田久紘(一ツ木町)干野秀子(高浜市)▽写真 毛受紘美(中山町)▽書 籠瀬提花(半城土中町)中根瑶翠(西境町) 中川剛碩(高浜市)▽工芸 山田洋(大正町)岡本勲夫(豊田市)▽華道 加藤眞(高須町)鈴木君亞(泉田町)小林明義(野田町)▽民踊 近藤静子(井ケ谷町)森田京子(野田町) 内田千津子(井ケ谷町)塚本敏子(今川町)小川映子(東境町)西尾征子(小垣江町)川瀬フサエ(築地町)▽民謡 松岡孟(安城市) 加藤富子(野田町)近藤清枝(井ケ谷町)▽尺八 藤井一行(碧南市)▽詩吟 鈴木キヨ子(天王町)澤田奎子(半田市)澤田輝之(同)鈴木多美子(大府市) 生田隼郎(豊田市) 清水保夫(小垣江町) 柏木喜代子(岡崎市)塚本明子(名古屋市)▽大正琴 深谷ちず子(泉田町)岡部八枝子(重原町) 真野米子(西境町)長谷川智賀子(小垣江町) 丹羽月子(野田町)▽フォークダンス 野口きく江(半城土西町)