受け継がれる「ひなまつり」
おこしもの木型「明治のもの?」/井ケ谷の近藤さん
愛知県の尾張三河地方で桃の節句に供えられる郷土菓子「おこしもの」を作る時に使う木型。刈谷市井ケ谷町の近藤啓さん宅でこのほど、明治時代のものと推測される木型が見つかりました。
木型は自宅倉庫に眠っていたもので、種類は手まりや鶴、鯛、物語の一場面を思わせる和服を着た鳥など6点。使い込まれた型は角が丸く、裏面には「三河國碧海郡井ケ谷村字 近藤勇八所有」と墨で記されています。
啓さんの4代前に当たる江戸末期生まれの勇八さんには、1881(明治14)年に三女が誕生していることから、「明治初期の木型ではないか」と啓さん。「刈谷のひなまつりに必要な″暮らしの道具” だったんですね」と驚いていました。
昭和期の木型/元町の久米さん
同市元町の久米一代さんは、昭和10年代のおこしものの木型を所有。日の丸や俵、明治天皇が愛したといわれる犬「チン」などが彫り込まれています。
「子どもの頃から、桃の節句が近づくと使った。家族で米2升ほどのおこしものを作った時も。蒸した後、ざるに並べて庭に干したりしてね、楽しい思い出です」と、当時を振り返ります。
御殿飾り華やかに/寺横町の原さん
同市寺横町の原友子さん宅では、昭和30年代の「御殿飾り」を、ひなまつりに合わせて飾り付け。京都御所をイメージしたきらびやかな舞台に、内裏びなたちが優しくほほ笑んでいます。
原さんの誕生以来、長きにわたって大切にされてきました。
原さんは「子どもの頃から毎年見てきたものですが、今になって人形の表情に心が和みます。日本文化の良さを、次の世代に残していきたいですね」と話します