民話のキツネ「郷土愛深めて」刈谷市・松雲院

 白狐(しろぎつね)の初連が主役の刈谷の民話「恩田の初連」にゆかりのある曹洞宗の古寺、松雲院=愛知県刈谷市恩田町=の境内に昨年、1匹のキツネが現れました。


 目撃したのは、都築史岳副住職。折に触れて檀家らに伝えており、「薄れゆく地元の古い民話が、語り継がれるきっかけになれば」と話しています。


 かつて、同寺の周辺には原野が広がっていましたが、現在は国道155号線や新幹線の高架が走り、「50年ほど前から、この辺りにキツネはいない」といわれている場所。


 境内でキツネの姿を写真に収めた都築副住職は「最初は犬かと思ったが、ふさふさのしっぽが見えた。体は少し白っぽかったし、初連の巣穴があったと伝わる本堂の裏に走って行ったので、もしかして?」とにやり。

「〝初連〟は、刈谷藩主が三浦氏の頃、江戸中期のお話。令和の松雲院にキツネが現れたという話題を知った子どもたちに、民話を通じて地元への関心や郷土愛を深めてほしい」と願いを込めます。

【松雲院に現れたキツネ】

 

副住が職語り継ぐ 「恩田の初連」

 刈谷市恩田の松雲院に初連という白狐が住んでいた。住職と親しい刈谷藩主はよく寺を訪れ、家来は退屈しのぎに巣穴の中にいる子ギツネをいじめた。 
 激怒した初連は、藩主のもとに姫君がこし入れする際、花嫁に化けて仕返しを試みるが、入浴時にバシャバシャと音を立て、尻尾で湯をかき混ぜる姿を見つけられ、ばれてしまった。この騒ぎで藩主は国替え。初連は、住職にこっぴどく叱られ、恩田を追い出されて箱根に移り住んだ。
 後に、反省の念から、参勤交代で箱根を通る藩主を警護したという初連。明治維新の後、恩田に戻ったとか。

【キツネを写真におさめた都築副住職】

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