知立の歴史ぶらり探訪・翁のいざない

第6話(後編) 芭蕉、池鯉鮒宿を詠む

 「芭蕉」という俳号はあまりにも有名ですが、この他にも多くの俳号を用いています。実名の宗房から始まり、羽扇、羊角、杖銭、風羅坊、是仏坊、素宣、華桃園、栩栩斎、座興庵、夭々軒、泊船堂、釣月軒、無名庵、蓑虫庵、瓢中庵、桃青、と名乗りながら、俳聖芭蕉へと上り詰めたのです。
 俳号を眺めていると、「不易流行」の境地に達した後も、「来客謝絶」の1カ月を送り、さらには「軽み」に至った芭蕉の精神史を辿(たど)るようで興味深いですね。
 「四季の移ろいと、その土地の生業(なりわい)との交点が俳諧の糧」とは芭蕉の名言。四季を通して絶えることのなかった池鯉鮒宿の木綿市を、芭蕉は、見事な17文字の浮世絵に仕立て上げています。約900句といわれる芭蕉の一句が、我がまち知立に残されているとは何という幸せでしょう! 芭蕉の句碑の前に立ってみませんか、あなたも、ひょっとして芭蕉になれるかも?

(坂之上九門)
2012.3.17 知立くらしのニュース掲載

【無量寿寺境内にある芭蕉の連句碑】

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