知立の歴史ぶらり探訪・翁のいざない

第8話(前編) シーボルト、江戸へ向かう

 1826年3月29日。池鯉鮒宿に到着した一行に、宿場の人たちは驚いたことでしょう。4年ぶりに江戸へ向かうオランダ使節たちが宿泊するというのですから、これは一大事。本陣入口には、使節一行を示す〈VOC〉が刺繍(ししゅう)された赤・白・青3色旗が掲げられていたのでしょうか。
 紅毛碧眼のオランダ人は、商館長ステュルレル、医官シーボルト、書記ビュルゲルの3人。日本人はといえば、検使・通詞・随行員などの57人。宮宿からは、尾張の植物学者である水谷豊文・大河内存真・伊藤圭介が付き添っていました。
 オランダ使節たちの食事は、出島くずねりと呼ばれる料理人、2人が担当。西洋人には欠かすことのできないパンは、旅先でも十分調理が可能だったのです。
 馬上から、松並木を眺めながら江戸へ向かうシーボルトたちを、池鯉鮒宿の人たちはどんな思いで見送ったのでしょう?  

(坂之上九門)

【池鯉鮒宿のはずれにあったといわれる松並木】

(2012.6.16 知立くらしのニュース掲載)

関連記事一覧