知立の歴史ぶらり探訪・翁のいざない
第19話(前編) 西行法師の歌碑
〈五月雨は原野の沢に水みちていつく三河のぬまの八橋〉。見事な筆致で書かれた西行法師の歌碑が、知立文化広場入口左側に建立されています。歌碑裏面には、昭和60年5月建立、知立市制15周年記念、知立市文化協会15周年記念とありますので、周年事業の一環として建てられたことが分かります。
西行といえば、『新古今和歌集』に94首(最多入選。95首説もある)も選ばれた歌人中の歌人。歌碑の説明文によれば、みちのくを目指していた西行は八橋を2度訪ねていたとのこと。
西行の和歌として思い出されるのは、〈願わくば花の下にて春死なんその二月の望月のころ〉。桜の花の下で満月のころに人生を終えたいと願った西行。孤独を生きる力に変え、乱世の無常を心に秘めて歌の道を歩んだ歌人が、八橋ではなぜ風景写真のような和歌を詠んだのでしょう? 西行は業平の存在をよく承知のはず、不思議ですね。
(坂之上九門)
(知立くらしのニュース 2014.04.19 掲載)